虎屋文庫:和菓子だより
桜餅の葉 食べる? 食べない?
新版御府内名物案内双六(国立国会図書館蔵)より 江戸時代には餅1つに葉を2枚使ったという記録もあり、絵もその形で描かれています。 三つ食へば葉三片や桜餅 桜餅を食べ終わって、葉だけが残されている風景を詠んだ高浜虚子(たかはまきょし・1874~1959)の句です。一度に3つ、ペロリと食べてしまうくらい美味しかったのだろうなと思いつつ、少し引っかかる方もいらっしゃるかもしれません。 皆さんは、桜餅の葉を召し上がりますか? 以前、社内で聞いてみたところ「もちろん食べます」「絶対食べない」「移り香を楽しむのが風流」「葉と生地と餡の調和が美味」と、さまざまな声が寄せられました。 もちろん正解はなく、お好みでお楽しみいただくのが一番ですが、桜葉の産地、静岡県松崎町では、桜餅ではなく「桜葉餅」と呼ぶほどに愛を込めて作ってくださっていますので、ときには葉ごと召し上がってみるのもおすすめです。
桜餅の葉 食べる? 食べない?
新版御府内名物案内双六(国立国会図書館蔵)より 江戸時代には餅1つに葉を2枚使ったという記録もあり、絵もその形で描かれています。 三つ食へば葉三片や桜餅 桜餅を食べ終わって、葉だけが残されている風景を詠んだ高浜虚子(たかはまきょし・1874~1959)の句です。一度に3つ、ペロリと食べてしまうくらい美味しかったのだろうなと思いつつ、少し引っかかる方もいらっしゃるかもしれません。 皆さんは、桜餅の葉を召し上がりますか? 以前、社内で聞いてみたところ「もちろん食べます」「絶対食べない」「移り香を楽しむのが風流」「葉と生地と餡の調和が美味」と、さまざまな声が寄せられました。 もちろん正解はなく、お好みでお楽しみいただくのが一番ですが、桜葉の産地、静岡県松崎町では、桜餅ではなく「桜葉餅」と呼ぶほどに愛を込めて作ってくださっていますので、ときには葉ごと召し上がってみるのもおすすめです。
大阪府で郷土駄菓子の展示が開催されています
『駄がし行脚 東北編』(昭和36年)。所蔵:石橋佐吉氏、撮影:佐治康生氏 「ふるさとの駄菓子-石橋幸作が愛した味とかたち-」 日 程: 2018年3月9日(金)~5月22日(火) 場 所: LIXILギャラリー大阪(大阪市北区) 入場料: 無料 仙台「石橋屋」の二代目、石橋幸作氏(1900~76)は、菓子職人として伝統の郷土菓子を作りながら約半世紀にわたって諸国の駄菓子を調べ、絵と文字で残したばかりか、紙粘土で立体的に再現しました。その中から約200点を展示、ふるさとの駄菓子の魅力や多彩さを紹介しています。3月中旬に書籍も刊行予定です。 詳しくはこちらをご覧ください。※6月に東京に巡回します。 お問い合わせはLIXILギャラリー大阪(06-6733-1790)までお願いいたします。 薬駄菓子の模型。所蔵:博物館 明治村、撮影:佐治康生氏
大阪府で郷土駄菓子の展示が開催されています
『駄がし行脚 東北編』(昭和36年)。所蔵:石橋佐吉氏、撮影:佐治康生氏 「ふるさとの駄菓子-石橋幸作が愛した味とかたち-」 日 程: 2018年3月9日(金)~5月22日(火) 場 所: LIXILギャラリー大阪(大阪市北区) 入場料: 無料 仙台「石橋屋」の二代目、石橋幸作氏(1900~76)は、菓子職人として伝統の郷土菓子を作りながら約半世紀にわたって諸国の駄菓子を調べ、絵と文字で残したばかりか、紙粘土で立体的に再現しました。その中から約200点を展示、ふるさとの駄菓子の魅力や多彩さを紹介しています。3月中旬に書籍も刊行予定です。 詳しくはこちらをご覧ください。※6月に東京に巡回します。 お問い合わせはLIXILギャラリー大阪(06-6733-1790)までお願いいたします。 薬駄菓子の模型。所蔵:博物館 明治村、撮影:佐治康生氏
300年以上前の桜餅
元禄8年11月「御菓子之畫圖」(虎屋黒川家文書)より 春の和菓子といえば、まず「桜餅」を思い浮かべる方も多いことでしょう。現在おなじみの桜葉を巻いた桜餅が広まったのは、江戸時代も後期のことといわれています(徳川吉宗と桜餅参照)。画像の「さくら餅」は、それより古く、元禄8年(1695)の虎屋の菓子見本帳「御菓子之畫圖(おかしのえず)」に描かれたもの。この見本帳に描かれた菓子は黄や茶、灰色など落ち着いた色合いのものが多く、薄紅色はこの「さくら餅」のみです。まさに紅一点、可憐な色かたちには、日本人ならではの桜を慈しむ気持ちが込められているのではないでしょうか。
300年以上前の桜餅
元禄8年11月「御菓子之畫圖」(虎屋黒川家文書)より 春の和菓子といえば、まず「桜餅」を思い浮かべる方も多いことでしょう。現在おなじみの桜葉を巻いた桜餅が広まったのは、江戸時代も後期のことといわれています(徳川吉宗と桜餅参照)。画像の「さくら餅」は、それより古く、元禄8年(1695)の虎屋の菓子見本帳「御菓子之畫圖(おかしのえず)」に描かれたもの。この見本帳に描かれた菓子は黄や茶、灰色など落ち着いた色合いのものが多く、薄紅色はこの「さくら餅」のみです。まさに紅一点、可憐な色かたちには、日本人ならではの桜を慈しむ気持ちが込められているのではないでしょうか。
煉瓦の羊羹
先日、台東区浅草の工事現場で、明治23年(1890)に建てられた高層建築、凌雲閣(りょううんかく)の基礎部分と思われる遺構がみつかり、話題となりました。掘り出された煉瓦の一部は区での保存も決まったようですが、煉瓦の名称に「羊羹」があるのをご存知ですか? 『煉瓦要説』(1902)に、「煉瓦ヲ(略)縦ニ切半シテ用ユルモノ之ヲ羊羹ト云フ」と見えます。(下記参照) 縦に半分に切ったサイズ感は、なるほど確かにそっくりかもしれません。意外なところに名前が使われるのも、親しまれていればこそ。さて、凌雲閣にも「羊羹」は使われていたのでしょうか。 『煉瓦要説』国立国会図書館デジタルコレクションより(26コマ) 傍線虎屋文庫 凌雲閣 12階建で高さ52m、当時としては超高層建築だった。 『最新東京名所写真帖』国立国会図書館デジタルコレクションより(15コマ)
煉瓦の羊羹
先日、台東区浅草の工事現場で、明治23年(1890)に建てられた高層建築、凌雲閣(りょううんかく)の基礎部分と思われる遺構がみつかり、話題となりました。掘り出された煉瓦の一部は区での保存も決まったようですが、煉瓦の名称に「羊羹」があるのをご存知ですか? 『煉瓦要説』(1902)に、「煉瓦ヲ(略)縦ニ切半シテ用ユルモノ之ヲ羊羹ト云フ」と見えます。(下記参照) 縦に半分に切ったサイズ感は、なるほど確かにそっくりかもしれません。意外なところに名前が使われるのも、親しまれていればこそ。さて、凌雲閣にも「羊羹」は使われていたのでしょうか。 『煉瓦要説』国立国会図書館デジタルコレクションより(26コマ) 傍線虎屋文庫 凌雲閣 12階建で高さ52m、当時としては超高層建築だった。 『最新東京名所写真帖』国立国会図書館デジタルコレクションより(15コマ)
雛井籠 安永5年(1776)
菓子資料室 虎屋文庫では虎屋歴代の古文書や古器物に加え、菓子に関わるさまざまな資料を所蔵しています。このコーナーでは、その一部をご紹介していきます。 11.0×13.3×18.3(cm) 撮影:轟近夫氏 *画像をご使用になりたい方は虎屋文庫までご連絡くださいませ。江戸時代に作られた、雛菓子用の小ぶりな井籠(せいろう)。中に直径1.5cm程度の小さな菓子を詰め、宮中などへお納めしていました。現在では実物こそ使用しませんが、雛祭りの季節には、これを模した紙箱に菓子を詰めて販売しています。 実は、商品を入れる手提げ袋も、この雛井籠のデザインを取り入れたもの。昭和45年(1970)に、金属造型作家の永井鐵太郎(ながいてつたろう・1936~2021)氏※が制作して以来、若干の変更が加えられながらも受け継がれ、虎屋の顔ともなっています。 ※日展の評議員を務め、平成4年(1992)に日本芸術院賞を受賞。作家活動の傍ら、東京藝術大学在学中の昭和34年(1959)より虎屋に勤務し、パッケージ、店頭装飾などを手掛けた。 実は、手提げ袋の裏(底)にも、井籠をもとにしたデザインである旨記載しています。お手にされた際には是非ご覧ください。
雛井籠 安永5年(1776)
菓子資料室 虎屋文庫では虎屋歴代の古文書や古器物に加え、菓子に関わるさまざまな資料を所蔵しています。このコーナーでは、その一部をご紹介していきます。 11.0×13.3×18.3(cm) 撮影:轟近夫氏 *画像をご使用になりたい方は虎屋文庫までご連絡くださいませ。江戸時代に作られた、雛菓子用の小ぶりな井籠(せいろう)。中に直径1.5cm程度の小さな菓子を詰め、宮中などへお納めしていました。現在では実物こそ使用しませんが、雛祭りの季節には、これを模した紙箱に菓子を詰めて販売しています。 実は、商品を入れる手提げ袋も、この雛井籠のデザインを取り入れたもの。昭和45年(1970)に、金属造型作家の永井鐵太郎(ながいてつたろう・1936~2021)氏※が制作して以来、若干の変更が加えられながらも受け継がれ、虎屋の顔ともなっています。 ※日展の評議員を務め、平成4年(1992)に日本芸術院賞を受賞。作家活動の傍ら、東京藝術大学在学中の昭和34年(1959)より虎屋に勤務し、パッケージ、店頭装飾などを手掛けた。 実は、手提げ袋の裏(底)にも、井籠をもとにしたデザインである旨記載しています。お手にされた際には是非ご覧ください。
羊羹和尚登場 !
今回はかす寺(カステラ)の住職、羊羹和尚をご紹介します。江戸時代の漫画ともいえる、黄表紙の『名代干菓子山殿』(めいだいひがしやまどの・1778年)に描かれる人物で、頭の上の黒いものが羊羹! なんとこの黄表紙の登場人物は全部菓子で、頭に菓子をのせています。あらすじは、主君の干菓子山殿※の秘蔵の茶碗を奪われた小落雁が、恋人松風と茶碗探しの旅に出るというもの。羊羹和尚の出番はわずか2回で、干菓子でもないのになぜか登場する脇役ですが、その姿は一目見たら忘れられません。描いたのは美人画で有名な鳥居清長。和尚の風貌もなかなか味がありますね。もっとよくご覧になりたい方は下記リンク先をどうぞ。 ※干菓子山殿は、東山殿(室町時代の八代将軍足利義政)にかけている。 国会図書館デジタルコレクション『名代干菓子山殿』 参考 第56回 江戸おもしろお菓子展 国立国会図書館蔵
羊羹和尚登場 !
今回はかす寺(カステラ)の住職、羊羹和尚をご紹介します。江戸時代の漫画ともいえる、黄表紙の『名代干菓子山殿』(めいだいひがしやまどの・1778年)に描かれる人物で、頭の上の黒いものが羊羹! なんとこの黄表紙の登場人物は全部菓子で、頭に菓子をのせています。あらすじは、主君の干菓子山殿※の秘蔵の茶碗を奪われた小落雁が、恋人松風と茶碗探しの旅に出るというもの。羊羹和尚の出番はわずか2回で、干菓子でもないのになぜか登場する脇役ですが、その姿は一目見たら忘れられません。描いたのは美人画で有名な鳥居清長。和尚の風貌もなかなか味がありますね。もっとよくご覧になりたい方は下記リンク先をどうぞ。 ※干菓子山殿は、東山殿(室町時代の八代将軍足利義政)にかけている。 国会図書館デジタルコレクション『名代干菓子山殿』 参考 第56回 江戸おもしろお菓子展 国立国会図書館蔵