虎屋文庫:和菓子だより
こなしは「こなし羊羹」の略だった!
大阪の菓子屋、菊壽堂義信の主人による『日本菓子製造独案内 』(1904) より (左:表紙 右:こなし羊羹の説明) 関西で親しまれている上生菓子の製法に「こなし」があります※。餡に小麦粉などを混ぜて蒸し、もむ製法で、名称は「もみこなす」に由来すると考えられます。意外に思われるかもしれませんが、菓子としての羊羹の最も古い製法を今に伝えるもので、江戸時代には「もみ羊羹」「こなし羊羹」などとも呼ばれていました。「こなし羊羹」の名はよく使われたのか、明治37年(1904)刊行の菓子製法書にも見えます(上図)。しかし、「羊羹」といえば煉羊羹が主流になるにしたがい、「こなし」が一般的な呼び名になったと思われます。 ちなみに虎屋では、「こなし」と同じ製法を、江戸時代には「羊羹仕立」、明治時代後期以降には「羊羹製」と呼んでいます。「羊羹」の名前や製法を重視し、残したいという強い思いがあったのかもしれません。 ※関東では、餡に求肥や薯蕷(山芋)の生地を混ぜて煉りあげる「煉切」(ねりきり)の方がなじみ深い。 参考 羊羹製『梢の秋』 注釈 参考 羊羹の変遷については、虎屋文庫著『ようかん』 (新潮社、2019年)をご参照ください。
こなしは「こなし羊羹」の略だった!
大阪の菓子屋、菊壽堂義信の主人による『日本菓子製造独案内 』(1904) より (左:表紙 右:こなし羊羹の説明) 関西で親しまれている上生菓子の製法に「こなし」があります※。餡に小麦粉などを混ぜて蒸し、もむ製法で、名称は「もみこなす」に由来すると考えられます。意外に思われるかもしれませんが、菓子としての羊羹の最も古い製法を今に伝えるもので、江戸時代には「もみ羊羹」「こなし羊羹」などとも呼ばれていました。「こなし羊羹」の名はよく使われたのか、明治37年(1904)刊行の菓子製法書にも見えます(上図)。しかし、「羊羹」といえば煉羊羹が主流になるにしたがい、「こなし」が一般的な呼び名になったと思われます。 ちなみに虎屋では、「こなし」と同じ製法を、江戸時代には「羊羹仕立」、明治時代後期以降には「羊羹製」と呼んでいます。「羊羹」の名前や製法を重視し、残したいという強い思いがあったのかもしれません。 ※関東では、餡に求肥や薯蕷(山芋)の生地を混ぜて煉りあげる「煉切」(ねりきり)の方がなじみ深い。 参考 羊羹製『梢の秋』 注釈 参考 羊羹の変遷については、虎屋文庫著『ようかん』 (新潮社、2019年)をご参照ください。
菓子切手 江戸~明治時代
菓子資料室 虎屋文庫では虎屋歴代の古文書や古器物に加え、菓子に関わるさまざまな資料を所蔵しています。このコーナーでは、その一部をご紹介していきます。 饅頭切手 虎屋伊織 *画像をご使用になりたい方は虎屋文庫までご連絡くださいませ。 菓子切手とは現在の商品券のようなもので、菓子券とも呼ばれ、江戸時代後期から明治時代にかけて盛んに流通していました。 一説には大坂高麗橋の虎屋伊織(現在の鶴屋八幡)が発行した「饅頭切手」がはじまりといわれ、菓子以外にも酒や豆腐・鮨など食品の切手が多く作られています。 当時の日記などから、切手は贈答品として広く使われたことがうかがえます。慶事や弔事のお使い物はもちろん、かさばらない、ちょっとした手土産としても好まれました。また、日保ちのしない品の場合、貰い手の都合の良い時に商品を交換できることが重宝された要因でしょう。 下の画像は、菓子切手の一つ「羊羹切手」。年代は異なりますが、同じ大坂長堀問屋橋の長濱屋重房の「引札」(現在の広告チラシ類)も併せて紹介します。最初に大きく浪華羊羹の文字があり、切手を販売していることも強調しています。 羊羹切手 長濱屋重房 引札 長濱屋重房(年代不詳) 「浪華羊羹 切手御座候」の文字がみえる
菓子切手 江戸~明治時代
菓子資料室 虎屋文庫では虎屋歴代の古文書や古器物に加え、菓子に関わるさまざまな資料を所蔵しています。このコーナーでは、その一部をご紹介していきます。 饅頭切手 虎屋伊織 *画像をご使用になりたい方は虎屋文庫までご連絡くださいませ。 菓子切手とは現在の商品券のようなもので、菓子券とも呼ばれ、江戸時代後期から明治時代にかけて盛んに流通していました。 一説には大坂高麗橋の虎屋伊織(現在の鶴屋八幡)が発行した「饅頭切手」がはじまりといわれ、菓子以外にも酒や豆腐・鮨など食品の切手が多く作られています。 当時の日記などから、切手は贈答品として広く使われたことがうかがえます。慶事や弔事のお使い物はもちろん、かさばらない、ちょっとした手土産としても好まれました。また、日保ちのしない品の場合、貰い手の都合の良い時に商品を交換できることが重宝された要因でしょう。 下の画像は、菓子切手の一つ「羊羹切手」。年代は異なりますが、同じ大坂長堀問屋橋の長濱屋重房の「引札」(現在の広告チラシ類)も併せて紹介します。最初に大きく浪華羊羹の文字があり、切手を販売していることも強調しています。 羊羹切手 長濱屋重房 引札 長濱屋重房(年代不詳) 「浪華羊羹 切手御座候」の文字がみえる
「古典の日」ホームページ連載「古典の日絵巻」8月号で羊羹を紹介しました。
今回の「古典の日絵巻」のテーマは、狂言の「文蔵」と羊羹です。下記からご覧くださいませ。 古典の日「古典の日絵巻」 *11月1日は古典の日。源氏物語千年紀を記念して、2008年に京都で宣言されました。古典の日推進委員会によるホームページには、古典に広く親しんでもらえるよう、文学・音楽・美術・演劇・伝統芸能などに関わる様々な活動が紹介されています。連載の一つとして、4月より「古典の日絵巻 第九巻 古典作品で楽しむ和菓子」がはじまりました(執筆・虎屋文庫 中山圭子)。毎月1日に更新で、1年間続きます。 *裏千家淡交会会報誌『淡交タイムス』2015年1~12月号(4月号除く)に掲載した記事をもとにしています。
「古典の日」ホームページ連載「古典の日絵巻」8月号で羊羹を紹介しました。
今回の「古典の日絵巻」のテーマは、狂言の「文蔵」と羊羹です。下記からご覧くださいませ。 古典の日「古典の日絵巻」 *11月1日は古典の日。源氏物語千年紀を記念して、2008年に京都で宣言されました。古典の日推進委員会によるホームページには、古典に広く親しんでもらえるよう、文学・音楽・美術・演劇・伝統芸能などに関わる様々な活動が紹介されています。連載の一つとして、4月より「古典の日絵巻 第九巻 古典作品で楽しむ和菓子」がはじまりました(執筆・虎屋文庫 中山圭子)。毎月1日に更新で、1年間続きます。 *裏千家淡交会会報誌『淡交タイムス』2015年1~12月号(4月号除く)に掲載した記事をもとにしています。
魅力を探る 琥珀製「若葉蔭」
琥珀製『若葉蔭』 販売中~7月31日迄 季節をうつす和菓子。朝顔やひまわりといった夏の意匠が店頭に並んでいますが、なかでも目をひくのは金魚の菓子ではないでしょうか。近年の金魚ブームもあって、和洋問わず金魚の菓子をしばしば目にしますが、虎屋の「若葉蔭」は大正7年(1918)の見本帳に見える歴史ある菓子※です。透明な生地は、寒天と砂糖を煮溶かして固めたもので、琥珀製(こはくせい)と呼ばれます。なかの金魚は小さな木型を使って作っており、模様や表情が一匹ずつ異なるのが楽しいところ。うろこまで細かく再現されているので、ぜひよくご覧ください。 大正7年(1918)「黒川光保新菓雛形」 なお、金魚の菓子は、夏目漱石の『門』(1910)にも登場します。「一丁の豆腐位な大きさの金玉糖の中に、金魚が二疋透いて見える」。金玉糖(きんぎょくとう)とは、琥珀製の別名で、「若葉蔭」と同趣向の菓子が想像されます。甘党で知られる漱石なので、実際にこうした菓子を目にし、気に入ったので作品に登場させたのではないでしょうか。 ※ 明治37年(1904)、明治天皇が渋沢栄一に、虎屋製の、寒天に金魚の細工物を浮かべた菓子を見舞いとして贈ったとの逸話もある。
魅力を探る 琥珀製「若葉蔭」
琥珀製『若葉蔭』 販売中~7月31日迄 季節をうつす和菓子。朝顔やひまわりといった夏の意匠が店頭に並んでいますが、なかでも目をひくのは金魚の菓子ではないでしょうか。近年の金魚ブームもあって、和洋問わず金魚の菓子をしばしば目にしますが、虎屋の「若葉蔭」は大正7年(1918)の見本帳に見える歴史ある菓子※です。透明な生地は、寒天と砂糖を煮溶かして固めたもので、琥珀製(こはくせい)と呼ばれます。なかの金魚は小さな木型を使って作っており、模様や表情が一匹ずつ異なるのが楽しいところ。うろこまで細かく再現されているので、ぜひよくご覧ください。 大正7年(1918)「黒川光保新菓雛形」 なお、金魚の菓子は、夏目漱石の『門』(1910)にも登場します。「一丁の豆腐位な大きさの金玉糖の中に、金魚が二疋透いて見える」。金玉糖(きんぎょくとう)とは、琥珀製の別名で、「若葉蔭」と同趣向の菓子が想像されます。甘党で知られる漱石なので、実際にこうした菓子を目にし、気に入ったので作品に登場させたのではないでしょうか。 ※ 明治37年(1904)、明治天皇が渋沢栄一に、虎屋製の、寒天に金魚の細工物を浮かべた菓子を見舞いとして贈ったとの逸話もある。
虎屋文庫の書籍『ようかん』の重版と新潮社Webマガジン「考える人」掲載のお知らせ
羊羹の謎めいた歴史や奥深い魅力をテーマにした『ようかん』は、昨年10月30日に刊行。お蔭様で、新聞・雑誌の書評やラジオ番組で紹介されるなど、ご好評をいただき、このたび重版となりました。 これにあわせ、新潮社Webマガジン「考える人」に、虎屋文庫へのインタビュー形式で、羊羹についての記事が掲載されました。 大河ドラマ『麒麟がくる』に関連して、戦国武将がもてなしに使った羊羹の記録を中心に、意外なエピソードをご紹介していますので、ぜひお楽しみくださいませ。 なお、『ようかん』の本は一般書店ほか、下記とらや直営店でも販売しております。 赤坂店・東京ミッドタウン店(2020年7月22日現在)
虎屋文庫の書籍『ようかん』の重版と新潮社Webマガジン「考える人」掲載のお知らせ
羊羹の謎めいた歴史や奥深い魅力をテーマにした『ようかん』は、昨年10月30日に刊行。お蔭様で、新聞・雑誌の書評やラジオ番組で紹介されるなど、ご好評をいただき、このたび重版となりました。 これにあわせ、新潮社Webマガジン「考える人」に、虎屋文庫へのインタビュー形式で、羊羹についての記事が掲載されました。 大河ドラマ『麒麟がくる』に関連して、戦国武将がもてなしに使った羊羹の記録を中心に、意外なエピソードをご紹介していますので、ぜひお楽しみくださいませ。 なお、『ようかん』の本は一般書店ほか、下記とらや直営店でも販売しております。 赤坂店・東京ミッドタウン店(2020年7月22日現在)
資料紹介 「かわいい羊羹」広告
*画像をご使用になりたい方は虎屋文庫までご連絡くださいませ。 小形羊羹は90年前に売り出された時 から、長い間2本入りの箱が定番でしたが、実は、途中で一度、現在のような1本売りをしたことがあります。写真は昭和38年(1963)7月5日『東京新聞』の広告です。「かわいい羊羹」のコピーが斬新ですね。「夜の梅」「おもかげ」「新緑」「空の旅」に加えて、この時に発売されたのが珈琲入りの羊羹 。戦時中、止まっていた珈琲の輸入量が増えはじめた時期でした。 1本売りは時代の先取りのし過ぎだったのか、2年ほどで2本入りに戻り、現在のデザインとなった平成20年(2008)まで続きました。珈琲羊羹は、その際に定番から外れ、現在では期間限定商品となっています。コロンビア産コーヒーの香り豊かな羊羹、見かけられましたら是非一度お試しください。
資料紹介 「かわいい羊羹」広告
*画像をご使用になりたい方は虎屋文庫までご連絡くださいませ。 小形羊羹は90年前に売り出された時 から、長い間2本入りの箱が定番でしたが、実は、途中で一度、現在のような1本売りをしたことがあります。写真は昭和38年(1963)7月5日『東京新聞』の広告です。「かわいい羊羹」のコピーが斬新ですね。「夜の梅」「おもかげ」「新緑」「空の旅」に加えて、この時に発売されたのが珈琲入りの羊羹 。戦時中、止まっていた珈琲の輸入量が増えはじめた時期でした。 1本売りは時代の先取りのし過ぎだったのか、2年ほどで2本入りに戻り、現在のデザインとなった平成20年(2008)まで続きました。珈琲羊羹は、その際に定番から外れ、現在では期間限定商品となっています。コロンビア産コーヒーの香り豊かな羊羹、見かけられましたら是非一度お試しください。